tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

米、NAFTA再交渉へ:先進国企業の行動原理とは

2017年08月17日 12時37分14秒 | 国際経済
米、NAFTA再交渉へ:先進国企業の行動原理とは
 世界に先進国と途上国があり、国別の経済格差があるのは現実で、この問題は避けることはできません。一国の中でも地域別経済格差は存在します。

 ただ、国別の経済格差はそのままでいいかというと、誰もそうは考えません。
 途上国はそれぞれに努力して経済水準を上げ、先進国もそれに協力して、世界の国々が、より高い経済水準をクリアーすることを目指し、そうすることが人類の平和共存に役立っていくのだと考えています。

 経済協力や技術協力などが基本でしょうが、先進国企業による直接投資はより大きな効果を持つ方法として、実行されてきました。
 特に植民地がなくなった第二次大戦以降、先進国の企業は途上国、新興国に積極的な投資を行ってきたのではないでしょうか。

 そこで問題になるのが、経済発展と賃金水準の問題です。
 本来から言えば、一国の経済発展のレベルによってその国の賃金レベルは決まるしかありません。経済発展のレベルはその国の生産性の水準という事になりますが、生産性の水準が半分の国なら、賃金も大体半分の水準という事になるのが自然です。

 こういう状態ですと、先進国と途上国の国際競争力は同じという事になります(勿論、平均での話です)。
 ところが、賃金水準が半分の国に、先進国企業が進出し、先進国の生産設備を使い従業員を教育して、2倍の生産性で生産をしたら、賃金の安い部分はそのまま先進国企業の利益になります。

 その国の賃金より多少高い賃金を支払っても、本国で生産するよりずっと有利です。
 アメリカとメキシコの問題の根本原因はここで、アメリカ企業がメキシコへ投資をし、より大きな利益を上げるために考えた方法が、企業の役には立っても、国に損害を与えるという結果になったという、企業と国の利益相反の問題なのです。

 それを助長したのが、NAFTAという自由貿易協定です。そして、アメリカとしては困ったことに、この戦略に他の先進国企業なども相乗りするようになったことです。
 アメリカの多くの先進企業は海外に出ていき、そこで利益を上げ、本国の生産拠点だったデトロイトのような都市は、いわゆるラストベルトになりました。

 もともと、世界一の技術水準を持つアメリが主導した自由貿易システム、自由な資本移動といった世界経済活性化のための理論は、国境を越える企業活動の急速な進展により、目に見える形で企業と国の利益相反を生み出すケースが現実化したわけです。

 トランプさんは、企業経営者から、国の経営者になって、この利益相反問題について、極めて率直に問題提起をしたのですが、それでは元に戻して、自由貿易や自由な資本移動をやめれば(制限すれば)いいかという問題もやはり存在します。

 どこまでの自由がいいのか、どこまでの規制がいいのか、「 真理は中間にある」のでしょうが、理論と現実のギャップは大きいようです。
 その結果が、一国のリーダーの識見が問われるということになるのでしょう。

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